生成AI需要の爆発的増加と半導体メーカーの協調減産という「ダブルショック」により、SSD価格が2025年後半から急騰しています。2025年11月には一部NANDチップで月間60%超の価格急騰が発生し、秋葉原の複数ショップでは購入制限も始まりました。NANDコントローラー大手Phison CEOは「供給不足は今後10年続く可能性がある」と警告しており、主要メーカーの2026年生産能力は既に完売。2025年5月頃の底値期間を逃した消費者は、当面は価格下落を期待できない状況です。
📈 2025年は年前半の下落から後半の急騰へと劇的転換
2025年のSSD価格は、四半期ごとに明確に異なる様相を見せました。Q1は前四半期比13〜18%の下落で始まり、供給過剰と消費者需要低迷が続きました。TrendForceによると、NAND上位5社の合計売上は前期比約24%減の122億ドルに落ち込んでいます。
転機となったのはQ2(4〜6月)です。メーカーの減産効果が顕在化し、日本経済新聞は「SSD大口取引価格が3四半期ぶりに上昇に転じ、前期比+6%」と報じました。PC Watchの調査では、2025年5月前後が年間で最も買い得な時期だったと分析されています。
Q3以降は上昇が加速しました。AIインフラ投資の急拡大とHDD供給不足によるSSDへの需要シフトが主因で、Client SSDは前四半期比10〜15%上昇。キオクシアは前期比33.1%増と最高成長率を記録しました。
📅 2025年の四半期別NAND契約価格変動
- Q1(1〜3月):前四半期比 -13〜18% 📉(供給過剰、需要低迷)
- Q2(4〜6月):前四半期比 横ばい〜+6% ➡️(底打ち、減産効果)
- Q3(7〜9月):前四半期比 +5〜10% 📈(AI需要、供給引き締め)
- Q4(10〜12月):前四半期比 +20〜60%超 🚀(深刻な供給不足)
🔥 2025年11〜12月は記録的な価格高騰が発生
2025年11月のNANDフラッシュ市場は異常事態となりました。TrendForceが12月1日に発表したデータによると、主要NANDウェハー契約価格は月間平均で20〜60%超上昇。512Gb TLCは65%超という全TLC製品中最大の上昇率を記録しています。
Phison CEOのPua Khein-Seng氏は、1TB TLCチップが2025年7月の4.80ドルから11月には10.70ドル(約123%上昇)に達したと明かしています。Samsungは9月以降、一部メモリチップで最大60%の値上げを実施。SanDiskも11月にNAND契約価格を50%引き上げました。
🇯🇵 日本市場の状況
秋葉原の小売価格は急騰しています。ITmedia、エルミタージュ秋葉原の報道によると、DDR5-5600 16GB×2枚は10月1日の約14,700円から11月2日には約32,700円へと2倍以上に上昇。代理店仕切り価格は8月末最安値から3〜4倍水準に達し、一部ショップでは購入制限が実施されました。
- DDR5 48GB×2枚:+17,000円以上
- DDR5 32GB×2枚:+4,000円以上
- 8TB HDD(WD Blue):+10,000円以上
- SSD各容量:全面的に上昇傾向
TSUKUMO eX.のコメントとして「年末どころか半年先や1年先まで見据えないといけない状況」と報じられており、日本市場は円安による追加の価格上昇圧力も受けています。
💰 主要容量帯別の値上がり事例(2025年11月時点)
秋葉原の主要ショップでは、以下のような急激な値上がりが観測されています:
250GB クラス
- 主要メーカー品:+2,500〜4,000円の値上がり(約20〜30%上昇)
- エントリーモデルでも価格上昇は避けられず、従来8,000円前後だった製品が10,000〜12,000円台に
500GB クラス
- 人気モデル:+4,000〜6,500円の値上がり(約25〜35%上昇)
- 従来12,000〜15,000円だった製品が16,000〜21,000円台に上昇
- 一部のハイエンドモデルでは+7,000円以上の値上がりも
1TB クラス
- 主流モデル:+6,000〜10,000円の値上がり(約30〜40%上昇)
- Samsung 990 EVOシリーズなど人気製品は特に値上がりが顕著
- 従来18,000〜22,000円だった製品が24,000〜32,000円台に
- Gen4 NVMe SSDでも例外なく価格上昇
2TB クラス
- ハイエンドモデル:+12,000〜21,500円の値上がり(約35〜45%上昇)
- Samsung 990 PROクラスは+15,000円前後の上昇
- ADATA MARS 980 BLADEなどは+21,500円(43.5%上昇)の報告も
- Crucial P310は+8,980〜12,600円の値上がり
- 従来28,000〜35,000円だった製品が40,000〜56,000円台に
⚠️ 注目ポイント:エントリーモデルから高性能モデルまで、全ての価格帯で値上がりが進行しています。「安いモデルを選べば大丈夫」という選択肢が、もはや通用しない状況になっています。
❓ なぜこれほど価格が高騰しているのか
価格高騰の最大の原因は、AI向けデータセンター需要の爆発と主要メーカーの協調減産が同時に起きていることです。
AIデータセンターが引き起こした「パニック買い」
生成AIインフラへの投資が世界的に急拡大し、大容量エンタープライズSSDの需要が急増しています。2025年にはOpenAIがSamsung・SKグループと月間90万枚のDRAMウェハー供給契約を締結。Samsungの次世代V9 NANDは発売前から「ほぼ完売」状態で、MicronのHBMチップは2026年まで完売済み。AI推論ワークロードだけで3年以内にグローバルSSD需要が2倍になるという予測もあります。
主要5社による協調減産
NAND市場は以下の上位5社で95%以上を占める寡占状態にあります:
- Samsung:36.9%
- SK Hynix:22.1%
- Kioxia:12.4%
- Micron:11.7%
- Western Digital:11.6%
2022〜2023年の「メモリ不況」で赤字を経験した各社は、収益性回復のため協調的に減産を実施。Samsungは西安工場で10%以上、SK Hynixは約10%(201万枚→180万枚)の減産を行い、Micronもシンガポール工場の生産を抑制しています。
さらに各社はAI向け高帯域幅メモリ(HBM)への設備投資を優先しており、消費者向けNAND生産は後回しになっています。業界関係者は「過去にフラッシュベンダーが投資を増やすたびに価格が崩壊し、投資回収できなかった経験がトラウマになっている」と指摘しています。
🔬 NANDフラッシュ市場の最新動向
NAND型フラッシュメモリ市場は2025年に急回復し、2030年には約726〜1,090億ドルに成長する見通しです。技術面では300層超の3D NANDが本格量産フェーズに入り、SK Hynixが2025年8月に世界初の321層4D NAND TLCの量産を開始しました。
主要メーカーの戦略転換
Samsung 🇰🇷
- V9 QLC NANDに設計不良が発生し、本格展開が2026年前半に延期
- DRAM注文の約70%しか対応できない状況
- 一部メモリ製品の価格を30〜60%引き上げる交渉を顧客と進行中
- V10 NANDは400層超を目指して開発中
Kioxia 🇯🇵
- 2025年に業績が急回復
- 北上工場第2製造棟が2025年9月に稼働開始
- 2026年初頭にフル出荷予定
- 経産省から最大2,429億円の助成金を獲得
- 四日市・北上工場で7,200億円規模の投資を進行中
- BiCS8(218層)からBiCS9(300層級)への移行も進行中
Western Digital / SanDisk 🇺🇸
- 2025年2月にNANDフラッシュ・SSD事業を完全分社化
- SanDiskとして独立運営を開始
- 供給逼迫は2027年まで延長される可能性
- 既に大手テック企業と2027年分の供給交渉を開始
Micron 🇺🇸
- 消費者事業から撤退を決定
- Crucialブランドは2026年2月末で終了 ⚠️
- AIデータセンター顧客を優先する方針を明確化
- これにより消費者向けSSD市場への供給はさらに減少の可能性
🔮 2026年の価格見通し:通年で供給不足、四半期ごとに上昇継続
2026年のSSD/NAND市場は構造的な供給不足が確実視されています。専門家やアナリストの予測は一様に厳しく、価格高騰は2026年を通じて継続する見込みです。
Q1 2026:二桁%の上昇が確実視
- Commercial Times:前四半期比 10%以上 📈
- UBS:NAND +15% 📈
- Samsung:大手顧客向け +20〜30% 🚀
TrendForceは2026年Q1のNANDフラッシュ価格が前四半期比10〜15%上昇と予測。各メーカーが順次値上げを実施するため、市場全体で二桁成長が確実視されています。
Q2〜Q4 2026:上昇継続だが上昇率は鈍化
UBSの予測では、Q2は+10%、Q3は+5%と上昇率は徐々に鈍化する見通し。ただし、TrendForceは2026年通年で供給不足が持続するとしており、年間累計で2025年末比30〜50%以上の価格上昇がベースシナリオとなっています。
PhisonのCEOによると、1TB TLCチップの卸価格は2025年7月の4.80ドルから10.70ドルへ123%上昇しており、「すべてのNANDメーカーが2026年の生産能力を完売済み」とのことです。
需給ギャップが価格を押し上げる
Commercial Timesの分析では、2026年のNAND需要成長率が20〜22%に対し、供給成長率は15〜17%にとどまる見込み。Gartnerは約3%の供給不足が2026年を通じて継続すると予測しています。
🏭 メーカーの2026年生産能力は既に完売状態
最も重要な事実は、主要NANDメーカーの2026年生産分が既に売り切れている点です。Phison CEOは「全NANDメーカーが2026年は完売と言っている」と明言。新規生産ラインは2027年後半まで稼働しないため、供給逼迫は長期化します。
💼 主要メーカーの2026年設備投資計画
| メーカー | 2026年設備投資 | 主要戦略 |
|---|---|---|
| Samsung 🇰🇷 | 約200億ドル(+11%) | HBM優先、V9/V10 NAND開発 |
| SK Hynix 🇰🇷 | 約205億ドル(+17%) | 321層QLC量産、AI-NAND開発 |
| Micron 🇺🇸 | 約135億ドル(+23%) | HBM優先、Crucial事業終了 |
| Kioxia 🇯🇵 | 約45億ドル(+41%) | BiCS8/9拡大、北上工場フル稼働 |
各社ともHBM(高帯域メモリ)とDRAMへの投資を優先しており、NAND容量拡大は限定的です。TrendForceによると、2026年のNAND設備投資総額は前年比約5%増の222億ドルにとどまり、生産能力拡張ではなくプロセス改善に投資が集中します。
⚠️ 業界専門家が警告する「10年間の供給不足」
Phison Electronics CEO(Pua Khein-Seng氏)
「2026年は深刻な供給不足。今後10年間、供給は逼迫し続ける」
Pua氏は、NAND価格が過去6ヶ月で2倍以上に上昇したことを指摘し、メモリ業界で「前例のないAI主導のスーパーサイクル」が到来したと分析しています。
Silicon Motion CEO
「HDD、DRAM、HBM、NANDが全て同時に深刻な供給不足になるのは史上初」
ADATA会長も「DRAM、NAND SSD、HDD、すべてが同時に不足するのは業界史上初めて」とコメントしており、事態の深刻さを物語っています。
SanDisk公式見解
供給逼迫は2027年まで延長される可能性があり、Samsung、SK Hynix、Kioxiaは既に大手テック企業と2027年分の供給交渉を開始しています。
⚠️ TrendForceの注意点
一方でTrendForceは、サプライヤーが生産を急拡大した場合、Q1 2026に10〜15%下落の可能性も示唆しています。AI投資バブル崩壊や景気後退による需要急減がリスク要因として挙げられます。
🇯🇵 日本市場への影響と今後の見通し
キオクシアの動向が鍵
国内唯一のNAND専業メーカーであるキオクシアは、経産省から最大2,429億円の助成金を獲得し、四日市・北上工場で7,200億円規模の投資を進めています。北上工場第2製造棟は2025年9月に稼働を開始し、2026年初頭にフル出荷予定。BiCS8(218層)からBiCS9(300層級)への移行も進行中です。
消費者・企業への影響
日本市場では以下の影響が予想されます:
- 小売SSD価格:グローバルなNAND価格上昇に加え、円安の追加圧力で上昇継続
- 調達リードタイム:エンタープライズSSDは納期長期化の恐れ
- 次世代PC需要:Windows 10サポート終了(2025年10月)に伴う駆け込み需要は2025年Q3にピークアウト済み
技術進化による中長期の展望
2026年には各社が300層超の3D NANDに移行し、SK Hynixは321層QLC NANDで書込性能56%向上を達成。SanDiskは2026年に256TB、2027年に512TBのSSDを投入予定であり、2026年までに2.5インチHDDとの価格パリティ達成が予想されています。
👥 消費者・法人への影響と対策
一般消費者への影響
「待てば安くなる」という従来のPC市場の常識は、少なくとも当面は通用しません。 2025年5月前後が底値期間だったと後から振り返ることになりそうです。
秋葉原ショップのコメント
- TSUKUMO eX.:「生産体制は簡単には変わらないため、年末どころか半年先や1年先まで見据えないといけない状況」
- オリオスペック:「マイニングブームの頃の動きに似ているが、今回は世界的な生成AI需要が背景。バブルではなく実需なので、なかなか収まらない」
法人への影響
企業のストレージ調達コストは大幅に増加しています。LenovoはDRAM・NANDを2026年末まで備蓄中で、AcerはSamsung工場から直接調達する動きを見せています。OEM/ODMはコスト上昇を小売価格に転嫁しきれず、利益率圧迫が懸念されます。
実用的なアドバイス
- ✅ 必要なら早期購入:価格下落を待つより上昇リスクが高い状況
- ✅ 在庫状況を監視:人気モデルは購入制限・在庫切れのリスクあり
- ✅ 大容量より実需優先:投機的な大容量購入より必要量を確保
- ✅ 代替品の検討:中古・リファービッシュ品も選択肢に
📝 まとめ:2025年は構造的変化の年、2026年も上昇継続へ
2025年のSSD価格高騰は、単なる一時的な需給調整ではなく、AI時代における半導体市場の構造的変化を反映しています。年前半の価格下落から後半の急騰へと劇的に転換し、2025年5月前後が最後の「買い時」だったことが明確になりました。
2026年は通年で供給不足が継続し、価格は四半期ごとに上昇する見込みです。主要メーカーの2026年生産能力は既に完売しており、新生産ラインの稼働は2027年後半まで期待できません。業界専門家は「供給不足は今後10年続く可能性」と警告しており、「いつか下がるだろう」という期待は、少なくとも2026年いっぱいは裏切られる可能性が高い状況です。
特に日本市場では、グローバルな供給逼迫に円安が重なり、価格上昇圧力が強まっています。消費者にとっては厳しい状況ですが、この構造を理解した上で計画的な購入判断を行うことが重要です。必要なストレージは早めに確保するという発想の転換が求められています。
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